習慣で食べるのを止めよう
ここで、消化、吸収の体のメカニズムを知っておくため、少しだけ専門的なことに触れる。体に食べ物が入ると、体内では、消化・吸収が始まる。食べ物が分解されてブドウ糖になり、それが脂肪や筋肉に蓄えられる。この消化吸収のプロセスは4~6時間程度である。その消化の時に酵素が働き、食べ物を細かく分解し吸収しやすいようにする。
細かく分解する栄養素とは、ビタミンやミネラルや糖など様々な栄養素であるが、代表的なものとして「三大栄養素」というのがある。それが「タンパク質・炭水化物・脂質」のことである。
その中でも炭水化物や糖質の多い食事は特に血糖値を上昇させ、インスリンを多く分泌させる。血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことで、食べ物が消化・分解されてブドウ糖となり、血液中に送り込まれ、食事30分くらいをピークに血糖値は上昇する。こういった背景があって、昨今、炭水化物ダイエットが流行しているのだが、はたしてダイエット法には賛同しないという声もある。話がそれるので、何故かは言及しない。
インスリンは、肝臓や筋肉、脂肪組織などに血糖を送り、血糖値を下げる働きを持っている。そしてインスリンが出ると人は空腹感を感じるようになっている。ここがポイントである、つまり、食べ物が消化してしまい胃の中が空っぽになるから「空腹感を感じる」わけではなく、あくまで血糖値の上下に対する反応ということである。
朝は排泄の時間なので、本来は強い空腹感を感じることはなく、食べる必要もないのに、習慣として食べている人がいるがほとんどであるように感じる。学生時代、「早弁」といって、昼前に授業中に弁当を食べることがあったが、あれは大食漢というだけではなく、朝ごはんを大量に食べ糖質を摂りすぎて、インスリンの分泌異常をきたし、血糖値が乱高下する作用により、朝、腹いっぱい食べたのに10時頃にお腹がすくという現象がおきるのだ。腹いっぱい食べたから、逆にお腹がすくというわけだ。
人間は時間と習慣で食べている。朝になったら朝ごはん、12時になったら昼ご飯、夜になったら夕食と、宿題は忘れても食べることは忘れない。全て、時間が来たらお腹がすいてなくとも食べるという行為にスイッチを入れるが、これは正しいのだろうか。
お腹がすいていなければ無理に食べる必要はない。私は長らく朝は何も食べない。昼も抜いたり、抜かないにしても、味噌汁一杯ですますこともよくあるが、晩御飯時まで全然お腹がすくことはない。それに、このプチ断食は日常に出来、身体の消化・吸収・排泄の働きに実に適している。
「食べる」を抑制するから排泄が活発になる
なぜならば、”朝だけ断食”をすれば、胃、小腸、大腸、肝臓、腎臓、心臓、肺など、あらゆる臓器の休息につながり、細胞の中に溜まっている脂肪やコレステロールなどの老廃物の排泄をしっかり行うことができる。体は食物が入ってくると消化・吸収のために否が応でも働かざるをえなくなるが、断食をして何も食物が入らなくなると排泄に力を集中することができる。だから、飛躍的に排泄が進む。
三食しっかり摂っていると、腸には「宿便」という悪害を働く便がこびりついているのだが、朝だけ断食をすることにより、宿便が排泄されることになる。積もり積もった宿便は腐敗毒をまき散らし、血液を汚し、様々な病気の原因を作り出す。大腸内視鏡によるポリーブ切除の第一人者の新谷弘実医学博士は、「腸相の良し悪しが健康を左右する」と言い切っていて、宿便の危険性を繰り返し警告している。
「モリチン」というホルモンがある。一般的には知られていないが、実に重要なホルモンである。モリチンは、消化管から分泌されるホルモンで、宿便をスッキリと排泄する役割を持っている。これは食事を摂らない時間が8時間以上続かないと分泌されないようになっている。そして空腹が長ければ長いほど活発に分泌される。つまりこのモリチンを活用することにより、お腹にこびりついた宿便を体外に排泄することができるのである。
長時間食物を摂らなかったら、お腹がグーと鳴ることがあるが、あのグーとなっている時に「モリチン」は活発に分泌している。よってあのお腹が鳴るのは健康のサインであり、喜ぶべき現象なのである。
現代人や現代っ子は、空腹を知らないと言われている。空腹になる前に食べるからだ。朝・昼・晩と三食を定期的に食べている人にとっては、夕食を摂ってから8時間以上経過する朝ごはんを食べる頃にだけ唯一モリチンは分泌することになるが、夜食をしたり〆のラーメンを食べているとモリチンが分泌する機会がなくなり、宿便はたまり放題となってしまう。
朝断食を実践すると、モリチンが分泌を始める8時間の断食どころか、20時から12時まで16時間も毎日断食をすることになるので、モリチンは活発な分泌をし、ひいてはお腹はスッキリという状態を維持することができる。腸は免疫力の70%~80%をつかさどっている器官なので、腸の健康はすなわち健康生活の第一歩となる。食べ過ぎる人は、その腸をいじめることになるので病気にかかりやすくなるのは言うまでもない。
このように体の消化、吸収、排泄のリズムに適した「朝だけ断食」により、かくも簡単に健康を手に入れることができるのである。この理屈を理解するなら、朝食を摂るという「弊害」も理解できると思う。
朝だけ断食の効用まとめ
まとめてみよう。朝だけ断食という、極めてハードルの低く誰でも出来る食習慣を保つことにより、次にあげる効能があるので始めない手はない。
・腸をはじめ、主要な内臓を休ませることができる
・腸内がきれいになり腸相がよくなる
・血液がきれいになり、血流までよくなる
・免疫力が上がる
・体に溜まった毒素が排泄される
・体のコリや痛みがとれる
・呼吸器、循環器系の働きがよくなる・眠りが深くなり、眼ざめがよくなる
・頭がすっきりとして、体が軽い
いかがであろうか。失うものはなく得るもが多いのが朝だけ断食である。その延長線上に以前提唱した、「一日一食」という、朝・昼断食があるが、前夜の夕食から24時間あくので、一層モリチンの分泌は活発になり、排泄を促進することになる。週末にでも挑戦してみることをお勧めする。
朝だけ断食の功徳
体の健康の鍵は「排泄」にあり、その「排泄」を促進する「朝だけ断食」を実践することにより、モリチンというホルモンの分泌を促し、通常の排便は当然のことながら「宿便」までも排泄してくれる。結果、腸相がよくなり、免疫力が高まり、病気にかかりにくい体質になる。これが朝だけ断食の功徳である。
1970年以降、腸の病気の増加の一途をたどっているし、胃がんが減少し大腸がんが急増しているのは、間違いなく食の欧米化に起因するのではないか。それと共に、朝だけ断食による一日二食の食生活を完全否定し、三食しっかり摂ることが健康生活の掟であるという、現代栄養学の間違った解釈と指導が、腸の健康にとどめをさし、日本人の腸相を悪くしたのであると思う。
その結果、腸の病気は急増した。そして、腸は排泄だけではなく、免疫力の70%も担っている病気から体を守る防衛省に当たる臓器なので、その重要な臓器の弱体化は、腸の病気の増加だけに留まらず、万病を呼び寄せることになってしまい「日本人の健康を損ね続け今にいたっている」と言えるのではなかろうか。
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